2012年5月14日 (月)

面会交流と慰謝料請求

前回は、面会交流を妨害したことにより慰謝料が認められた判決を紹介しましたが、今回は、慰謝料が認められなかったケースを紹介します。

東京地裁平成13年12月27日判決(ウエストロー・ジャパン)

 事案は、元夫(父親)が三人の子との面接交渉権を侵害されたことを理由として元妻に対し慰謝料請求をしたというものです。

 裁判所は、慰謝料を認めませんでした。
 理由は、元夫(父親)の言動等に子らの福祉に反する事情があったとしたからです。

 この判決は、面会交流について詳しく論じています。

 「面接交渉権は、親子という身分関係から認められる自然権である親権に基づき、これが停止された場合に、監護に関連する権利として構成されるものというべきである。もっとも、面接交渉は、子の人格形成、精神的発達に必要かつ有益であることを基礎としているのであり、子の福祉のために認められるべきものでなければならない。そのため、面接交渉は、子が親からの愛情を受け、親との交流を通じて人格を形成し、精神的に発達する権利としてとらえられるべきである。子は、非監護親と面接することにより、監護親からは得ることのできない会話や遊び、相談などの利益を得ることができる。また、非監護親との交流を継続させることにより、子への愛情や関心がなくなることに対する不安感や孤独感、無力感等を解消しうる利益が得られるのである。特に、人格の基礎が形成される幼児期においては、子が両親と触れ合うことの重要性は重大であるし、この時期を逃しては得ることのできない体験もあるものというべきである。」

 このように述べた上で、面会交流を考えるポイントを次のように述べています。

1 面接交渉について検討する際には、まず、子の福祉の観点から考えなければならない
2 親は、子自ら実現することの困難な面接交渉権を実現させる責務を負うのであって、一方の親との交流を断ち切ってしまうことは、極力避けなければならない
3 もっとも、面接交渉が、子の人格形成、精神的発達を害する等、子の福祉に反するような特段の事情がある場合には、面接交渉権も制限を受けざるを得ない。
4 子の福祉に反するかどうかは、あくまでも子の福祉の観点から、それぞれの事案に即して個別具体的に判断すべきであり、監護親の個人的感情のみから面接交渉を拒絶することは許されない。
 何ら子の福祉に反するような事情がないにもかかわらず、面接交渉を阻害するような行為は、面接交渉権の侵害となる。

おそらくこの辺の論述は、法律実務家の共通認識といえるのではないかと思います。

このケースではこのような一般論を述べた上で、元夫(父親)が元妻に手紙や電話をして、元妻を精神的に不安定にさせ、元夫への信頼を失わせて元夫に対する面接交渉を躊躇させる言動があったものとして、元夫の慰謝料請求を認めませんでした。

面会交流をする上では、元夫、元妻とも社会常識に則った対応を取ることが求められるといえると思います。
当事者はいろいろな葛藤を抱いているだけに(それだから離婚したわけですが)、自制的な行為をする必要があるといえます。


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2012年5月 7日 (月)

面会交流の妨害と慰謝料

面会交流を妨害された場合、そのことを理由に慰謝料を請求することは可能です。
もっとも、妨害されたということだけで請求が認められるわけではなく、子の福祉を中心にして、父母双方の事情を総合考慮するという手法を裁判所は取ります。

東京地裁昭和63年10月21日判決(家月 41巻10号145頁)は、
 協議離婚の際父母間で合意した父と未成熟子との面接交渉が母によつて妨害されたとして、父子の母に対する慰謝料請求を認めた事例
です。

 このケースでは、協議離婚とのときに、1か月に1回(原則として全日)子どもと面会させるという約束をしていたのに、面会させなかつたり、面会させても全日という原則を守らなかったりしたという事実が認められています。

 興味深いのは、裁判所が慰謝料を認定している基準です。

 原告は、
  1 本来面会できるはずの回数につき、面会の機会も設定されなかつたときは、1回につき金20万円
  2 一応面会できたが、被告側の都合によつてついでに面会の機会を作つたり、十分な時間的余裕を持たなかつたときには、1回につき金10万円
  3 面会の約束にもかかわらず、これが破棄されたときには1回につき金30万円
 の慰謝料が妥当だと主張。

 裁判所はそれは高すぎるとして、
1 一部面会ができた場合
  午後2時ころから面会がされた場合について 1回あたり金5000円
  午後7時から面会がなされた場合について 1回あたり金1万円
2 面会の約束がされなかつた場合については、1回あたり金2万円
3 面会の約束がされたにもかかわらず、破棄された場合については1回あたり金3万円
という基準を設定しました。

これはひとつの裁判例であり、この基準がほかの裁判例で踏襲されているわけでもないのですが、ひとつの考え方として参考にはなるかと思います。

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2012年5月 3日 (木)

婚姻中のセックスレスの法律問題

夫婦のどちらかが、セックスを拒否したという場合は、それは離婚理由になるというのが過去の裁判例の流れでした。

これは、夫婦だったら、セックスするのが当然という価値観が前提にあったのだと思います。
ところが、現代はセックスレスという概念が浸透してきており、夫婦であってもセックスをしないカップルがいるし、セックスレスというだけでは、異常とはいえないという考え方が普通になってきています。

このように従来の見方が変わっていく中で、裁判所も変容を迫られるのではないかなと考えていたところ、こんな裁判例を見つけました。

 元妻から元夫に対して、婚姻中に性生活がなかったことを理由として、慰謝料の損害賠償を請求したというケースです
(東京地裁平成23年 3月15日判決 ウエストロー・ジャパン)。

 従来の裁判所の考え方であれば、婚姻中にセックスがなかったことは違法だとして、男性に対して慰謝料を認めるということもありえたと思います。

 しかし、東京地裁の裁判官は、元妻の請求を認めませんでした。

 理由として、まず、従来の裁判所の考え方を踏襲しています。

 「婚姻中の夫婦にとって,性生活は,互いの愛情を確かめ,子を持つことにもつながる極めて重要な要素であり,夫婦の一方は,それぞれ他方に対し,性交渉を行うことに協力すべき一般的義務を負うということができる。したがって,夫婦の一方が性交渉を開始したにもかかわらず,他方が合理的な理由もなくこれに応じないことは,上記協力義務への違反であり,不法行為を構成する。」

 しかし、ここで慰謝料が発生する場合をこの裁判官は限定します。

「しかし,夫婦の双方がともに性交渉を開始しない場合においては,原則として,いずれか一方にのみ性交渉を開始すべき義務が生じると解することはできず,例外的に,夫婦の一方に自ら性交渉を開始することができない客観的事情があり,他方に対して性交渉の開始を求めたにもかかわらず,他方が合理的な理由もなく性交渉を開始しないといった特段の事情が認められる場合に限り,他方が性交渉を開始しないことが上記協力義務に違反するものとして不法行為を構成すると解するのが相当である。」

 この部分何をいっているのか甚だわかりにくいのですが、結局、「セックスを開始した後、これを拒否したら慰謝料を認めるが、セックスを開始していない場合は(開始を求めただけでは足りない)、原則として慰謝料を請求できない」ということが言いたいのではないかと思います。

 この考え方自体が妥当なのかどうかよくわかりませんが、いずれにせよ裁判所なりに現代のセックスレスの現状を踏まえて、従前の考え方を現代に適用しようとしているのだと思います。

そのことは、次の裁判所の論述からもわかります。

 「この点,原告は,妻である原告から性交渉を求めたことがなかったとしても,自ら性交渉を求めなかった被告の責任は肯定されるべきであると主張するが,夫婦間の性生活における役割分担を性別により固定化する見解であり,価値観が多様化し,性別にかかわりなくその個性と能力を発揮することが期待される今日社会において,到底採用することができないものである。単に女性であることは,上記の自ら性交渉を開始することができない客観的事情にも当たらないというべきである。」

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2012年3月28日 (水)

離婚した後、夫所有の家に住み続けることができるか

次のような事案の場合、妻子は夫の家に住み続けることができるでしょうか。

1 夫名義で住宅を購入した(住宅ローンあり)
2 夫婦で離婚の話し合いになり、夫が居住地から出ていき、別居となった(妻子は引き続き夫の住宅に居住している)
3 夫が離婚訴訟を起こし、裁判所が離婚を認めた。
4 夫は、妻子に対して住宅から退去するよう求めている

この問題について
東京地裁平成23年 3月24日判決(ウエストロージャパン)は、
「妻は住宅から退去しなければいけない。」
という結論を出しています。

その理由としては、
「離婚判決の確定により,被告は本件建物の占有権原を失ったことが認められ,離婚に際し,新たな占有権原が設定されたなどの事情も認められない。」
と述べています。

 これはどういうことかというと
1 離婚するまでは、妻は住宅に住む権利を認められているが、離婚が確定したことで住む権利がなくなるのが原則
2 離婚に際して、新たに住宅に住む権利を獲得していれば別だが、そのような権利を獲得していない
ということです。

つまり、妻側から見て、住宅から追い出されないためには
1 離婚を防ぐこと
2 離婚が防げない場合は、財産分与などの名目で住宅に居住できるようにすること
のどちらかの策を取らなければならないわけです。

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2012年3月22日 (木)

夫婦の一方によるツイッターへの書き込み行為を理由に慰謝料請求できるか

夫婦の一方によるツイッターへの書き込み行為を理由に慰謝料請求できるか

 この問題について、東京高裁平成23年 9月29日判決(ウエストロー・ジャパン)が答えています。

 書き込みをした方=A,書き込みをされ方=Bとして判決文を要約してみます。

 ・書込みの内容は,Bに対する不満とBがした暴力(Aに対するもの)についてのもの(なお、ツイッターには実名は書かれていない)。
 ・Aは、これらを書き込んだことで、ツイッター上の結びつきのある仲間を対象に,自らの被害感情を訴え,Bを誹謗する言葉を発して,同情と共感を求め,Bに対する不満や否定的な感情を発散させていた。
 こういう場合であっても、
 ・著名ではない一般人によるツイッター上の書込みは,特にその内容が特殊なものでない限り,不特定多数の利用者の関心の対象とはならないと考えられることも考慮すると,Aによる上記書込みの行為は,Bの名誉や感情を侵害する違法な行為として評価するには足りない
 ・よって,Aのツイッターへの書込みには慰謝料請求できない

 要するに、
 一般人がツイッターに書き込んだ場合は、原則として違法行為とまではいえない(=慰謝料請求できない)。
 但し、内容が特殊で不特定多数の人が関心の対象となった場合は別(この場合は慰謝料請求できる)
ということになります。

 ツイッターについての裁判例ですが、ブログについても同じことが言えます。
 東京高裁判決では慰謝料請求は否定されていますが、ツイッターの書き込みが離婚の原因の一因になったことは認めており、ブログやツイッターを書く場合は、その辺まで考えて書かなければならないということになります。

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2012年2月23日 (木)

生活の分離・家計の分離

前回のブログ
1 離婚の意思をきちんと相手に伝えているか
2 生活を分離しているか
の二点をまずお聞きするということ、離婚の意思を伝えることの重要性についてお書きしました。

今回は、
<生活の分離について>

夫婦は共に協力して生活しています。
家計を共通にしていますし、車を共同でつかっていたりします。
このような共同生活を終了させるのが、離婚です。

まずは別居をすることが最初のステップです。
その後に、共通になっている家計を分離していきます。

別居したら、電気、ガス、水道代などは、それぞれが別々に使うことになります。
ですから、別々の名義で支払っていくのが原則です。
そのためには、名義を変更しなければならない場合もでてきます。

また、夫名義の車を妻が使っているという場合があります。
今後も妻側が使い続けるならば、車の名義を妻に移転するということの方が、車検のこと、任意保険のことを考えると合理的です。

このような生活の分離、家計の分離はいつか進めていかなければならないことですから、できるところから少しずつ行なっていきます。

もっとも、家計のあり方というのは人それぞれであり、長い間そのスタイルでやってきた場合は、家計の分離に抵抗がある場合もあります。
そのような場合は、ある程度時間をかけて行なっていく必要があります。

家計の分離の段階で双方の意見が対立して、スムースに進まなくなることもあり、このような場合は弁護士のアドバイスを借りながら、進めて行かれる方もいます。


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2012年2月20日 (月)

離婚の意思をきちんと相手に伝えること

離婚するにはどうしたらよいかというご相談を多く受けるのですが、法律上の手続きを説明する前にお伺いすることとして、
1 離婚の意思をきちんと相手に伝えているか
2 生活を分離しているか
の二点をお聞きすることにしています。

<離婚の意思をきちんと相手に伝えること>

結婚するときには、きちんと意思をあきらにされたかと思います。
離婚も同じです。
離婚したいと相手に意思を表明してください。
夫婦喧嘩の延長で「離婚する」などというのは、相手も捨てセリフだと思っていたりしますから、これだけではダメです。
慎重に考えた結果、離婚したいという気持ちであることを意思表示する必要があります。


直接相手と話をすることが、ベストだと思いますが、相手が暴力を振るったり、モラハラで言い負かされてしまうというような場合は、メールや手紙でも構いません。

要は、自分の気持ちとして、真剣に離婚を考えているのだということを示すことが必要だということです。

なぜかといいますと、このような表明がないと、相手は、「誰かに唆されて、離婚を言い出しているのではないか、相手が離婚を言い出しているのは本心からではないのではないか」というような心情をいつまでも持つことがあるからです。

以上のように、離婚の意思をきちんと表明し、理由を説明するのが、離婚の交渉の第一歩になると思います。
もっとも、それだけで相手がすぐに納得してくれるような方は、法律相談にはおいでにならないので、その場合は次のステップ、生活の分離、が必要になってきますが、その点については次回にご説明します。

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2012年1月24日 (火)

移送申立て・移送決定

Q 訴状を裁判所にだしたところ、被告から「移送申立て」というものがでたんですが、どういうものですか?
A 例えば、原告が東京に住んでいて、被告が札幌に住んでいたとします。
 原告としては、東京家裁で訴訟をしたほうが良いですよね。
 そこえ、東京家裁に遡上を提出したとしますと、被告としては困る。
 そこで、被告は札幌家裁に訴訟を移してもらいたいということで、こういう申立ができるわけです。
 これを移送申立てといいます。

Q 移送はどういう場合に認められるのですか。
A 法律では、考慮要素として、
 1 当事者及び尋問を受けるべき証人の住所
 2 使用すべき検証物の所在地その他の事情
をあげています。
 その上で、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときに移送決定ができるとしています。
 離婚訴訟の場合は、夫と妻と子どもがそれぞれどこにいるのか、それぞれの有利な点、不利な点を裁判所が検討して移送をするかどうか決めることとなります。

Q 第1回目の期日が決まっていたんですが、これはどうなりますか?
A 先ほどの例で行けば、東京家裁で訴訟をするかどうか自体が争われることになるので、第1回目の期日は取り消しになり、移送の問題が決まってから改めて第1回目の期日が決まります。

Q 移送の決定に対して、不服申立てができますか。
A 即時抗告という不服申立て方法があります(民訴法21条)。
 東京家裁の決定に対しては、東京高裁に判断を仰ぐことができます。

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2011年11月29日 (火)

セックスレス夫婦の一方の不貞行為

セックスレス状態の夫婦のうち、夫が不貞行為をしたので、妻が夫(とその相手)に対して損害賠償をしたケースについての裁判例があります。。

東京地裁平成23年 2月17日判決(ウエストロー;webでの判例集。有料です)
(裁判官 植垣勝裕)

妻は、夫とその不貞相手を同時に被告として、500万円を請求し、裁判所は慰謝料を認めています。

しかし、その額は90万円というかなり中途半端なものでした。
これには、このケースに特有な問題が影響しています。

1 夫婦は、婚姻後1週間を経過した以降は全く性交渉がなかった(双方が性交渉を求めることをしなかったためと認定されています)

2 原告である妻は、このセックスレス状態を改善しようと努力した形跡もなく,このような夫婦生活を送ることにつき特段の不満を抱いていたと認めるべき事情もうかがえないことを勘案すると,妻は,夫との性交渉自体をそれほど重視していなかったと考えざるを得ない

というような事情があったようです。

この判決文自体はセックスレスという言葉は使用されていないのですが、セックスレス状態にある夫婦のうち一方が不貞行為をしたケースに対する判断であり、その意味で注目に値するといえます。

裁判所は、夫婦がセックスレスであったことについて
 「通常の健康な夫婦としては極めて異常な状態であるといわざるを得ない」
と述べていますが、果たしてこれが正しいセックスレスの理解であるかどうかは、議論もあるところかもしれません。

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2011年11月25日 (金)

和解による離婚と離婚届

訴訟となって和解で離婚した場合、離婚届はいつ提出すればよいのかというご質問をいただきました。

和解ができた場合、和解調書というものを裁判所が作成します。
これは和解の期日から1週間以内にはできあがります。

離婚届にはそれを添付して、届け出ることとなります(厳密には和解調書の謄本というものを添付します)。

離婚届を出すのは、当事者の一方です。
基本的には、原告側が出すこととなりますが、特に被告からの申し出がある場合は、被告にすることも可能です。
被告である場合は、この点気をつけておいてください。

離婚届自体は役所にご自分で行くだけです。
他の方の同行などは必要有りません。
通常の協議離婚ですと、証人が2名必要になりますが、和解での離婚の場合は証人は不要となります。
和解調書の謄本が証人の代わりとなるからです。

離婚届の出し方については、各自治体が案内をしています
例:離婚届(千葉市HP)

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«モラルハラスメントと離婚