« 法律事務所大地 弁護士プロフィール | トップページ | 「婚姻を継続し難い重大な事由」 »

2009年11月11日 (水)

有責配偶者からの離婚請求を認めず(東京高裁平成20年5月14日判決)

有責配偶者からの離婚請求について、
 一審と二審で結論が異なったケースを紹介します(二審で離婚請求を認めず)。

東京高裁平成20年5月14日判決(家月61巻5号44頁)です。

(事実関係の概略)
昭和53年 婚姻
 夫の実家に同居するが、夫の母は,妻に対し,事ある毎に,「家柄が違う。被告は財産目当てで原告をたぶらかした。○○家の嫁として相応しくない。」などと言い,また,家事をすべて妻にさせるなどした。

 長男出生(口蓋破裂等の障害を持って生まれた)。
 夫の母は「○○家はそんな家系ではない。」などと露骨に嫌がり,妻を責めるとともに,夫も,長男を一切寄せ付けず,だっこしたり膝の上に乗せたりして触れ合うことをしないなど,邪険に扱った。

 その後、夫婦は、夫の実家からは一時独立して暮らしていたが、昭和61年夫の実家に戻った。

 夫や夫の母は、二男が生まれると,健常者である二男だけをかわいがり,長男とあからさまに差別した扱いをするようになった。

 平成5年、夫らの態度に耐えかねたので、子どもを連れて別居するため,離婚を求める調停を申し立てたが,夫は養育費の支払を拒否。

 同年,妻は別居し、子ども3人は、夫側が育てることとなった。

 平成17年,妻は夫に対し,婚姻費用の支払を求める調停を申し立て,婚姻費用として月額14万円を支払うという調停が成立した(妻別居から、この調停までは婚姻費用は支払われず)。

(東京高裁の理由)
東京高裁が離婚を認めなかった理由をまとめると次のとおりです。

1 夫は,平成5年×月に別居を始めてから,婚姻費用分担に関する調停が成立するまで,12年間、妻に対して婚姻費用を支払わなかった。
2 妻の唯一の収入は、夫からの月額14万円の婚姻費用分担金である。
3 妻には資産も,安定した住居もない。
4 妻は高齢であり、更年期障害,腰痛及び抑うつ症の疾病を患い,新たに職に就くことは極めて困難である。
 このような状況からすると、離婚を認めた場合、妻は、夫から婚姻費用分担金の給付を受けることができなくなり,経済的に困難に陥る。
5 長男には,生まれつきの身体的障害があり、妻が面倒を見る必要がある。
 夫は、訴訟上は、自分が面倒を見ると行っているが、今までの経緯からして夫が長男の生活の面倒をみることは考えられない。

 これだけ見てきますと、東京高裁が離婚を認めなかったのは当たり前のように思われるでしょう。
 注目すべきは東京家裁(離婚を認めた)の方かもしれません。

 詳細は、判決文を引用しておきますが、婚姻関係は既に破綻しているのだし、離婚に伴っての経済的問題は別に妻に支払いがなされる事で解決されるべきとの考えにたっています。
 

(東京家裁の論理)
  原告(夫)は,有責配偶者と認められるものの,不貞行為をしたとか,暴力を振るったということではなく,原告の母からの言葉等による嫌がらせや原告の長男に対する冷たい姿勢等に被告が悩んで家を出たものである。また,経済的な事情からとはいえ被告は長男らを置いて家を出ていったものであり,別居後の原告の監護態勢には,長女からすると小遣いをくれないとか,長男に対する態度が相変わらず冷たいものであった等の問題点はあるものの,原告は,母の助力も得ながら,学費,生活費等をすべて負担しながら,3人の子を成人するまで監護養育してきた。そして,現在では,いずれも成人し,長男は問題があるものの,長女は結婚し,二男は大学に在学しているのであって,離婚が直接子らの福祉に影響するという問題もない。
 原告と被告(妻)との別居期間は,すでに13年近くなっており,それまでの同居期間(約16年間)に比べると短いものの,相当の長期間に及んでいる。
 被告は,今離婚となると,被告が経済的に苛酷な状況に置かれると主張しているけれども,後記のとおりの経済的な給付が行われれば,必ずしも被告が苛酷な状況になるわけではなく,原告の経済的能力からすると,支払確保の可能性も高い。
 これらの諸事情を総合して判断すると,原告が有責配偶者であるからといって,その離婚請求を認めることが,信義誠実の原則に反するとまではいえない。

  離婚関係のご相談は無料(初回)
 ***************************************
千葉市中央区中央4-8-8日進ビル5F
法律事務所大地
電話でのご相談受付は
  平日午前9:15〜午後5:00は、043−225−0570まで。
  平日午後5時〜午後7時半、土日祝午前9時から午後7時半は、
  043−221−1388(相談受付専用)までお電話下さい。
  ****************************************

|

« 法律事務所大地 弁護士プロフィール | トップページ | 「婚姻を継続し難い重大な事由」 »

離婚訴訟」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 法律事務所大地 弁護士プロフィール | トップページ | 「婚姻を継続し難い重大な事由」 »