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2012年5月 3日 (木)

婚姻中のセックスレスの法律問題

夫婦のどちらかが、セックスを拒否したという場合は、それは離婚理由になるというのが過去の裁判例の流れでした。

これは、夫婦だったら、セックスするのが当然という価値観が前提にあったのだと思います。
ところが、現代はセックスレスという概念が浸透してきており、夫婦であってもセックスをしないカップルがいるし、セックスレスというだけでは、異常とはいえないという考え方が普通になってきています。

このように従来の見方が変わっていく中で、裁判所も変容を迫られるのではないかなと考えていたところ、こんな裁判例を見つけました。

 元妻から元夫に対して、婚姻中に性生活がなかったことを理由として、慰謝料の損害賠償を請求したというケースです
(東京地裁平成23年 3月15日判決 ウエストロー・ジャパン)。

 従来の裁判所の考え方であれば、婚姻中にセックスがなかったことは違法だとして、男性に対して慰謝料を認めるということもありえたと思います。

 しかし、東京地裁の裁判官は、元妻の請求を認めませんでした。

 理由として、まず、従来の裁判所の考え方を踏襲しています。

 「婚姻中の夫婦にとって,性生活は,互いの愛情を確かめ,子を持つことにもつながる極めて重要な要素であり,夫婦の一方は,それぞれ他方に対し,性交渉を行うことに協力すべき一般的義務を負うということができる。したがって,夫婦の一方が性交渉を開始したにもかかわらず,他方が合理的な理由もなくこれに応じないことは,上記協力義務への違反であり,不法行為を構成する。」

 しかし、ここで慰謝料が発生する場合をこの裁判官は限定します。

「しかし,夫婦の双方がともに性交渉を開始しない場合においては,原則として,いずれか一方にのみ性交渉を開始すべき義務が生じると解することはできず,例外的に,夫婦の一方に自ら性交渉を開始することができない客観的事情があり,他方に対して性交渉の開始を求めたにもかかわらず,他方が合理的な理由もなく性交渉を開始しないといった特段の事情が認められる場合に限り,他方が性交渉を開始しないことが上記協力義務に違反するものとして不法行為を構成すると解するのが相当である。」

 この部分何をいっているのか甚だわかりにくいのですが、結局、「セックスを開始した後、これを拒否したら慰謝料を認めるが、セックスを開始していない場合は(開始を求めただけでは足りない)、原則として慰謝料を請求できない」ということが言いたいのではないかと思います。

 この考え方自体が妥当なのかどうかよくわかりませんが、いずれにせよ裁判所なりに現代のセックスレスの現状を踏まえて、従前の考え方を現代に適用しようとしているのだと思います。

そのことは、次の裁判所の論述からもわかります。

 「この点,原告は,妻である原告から性交渉を求めたことがなかったとしても,自ら性交渉を求めなかった被告の責任は肯定されるべきであると主張するが,夫婦間の性生活における役割分担を性別により固定化する見解であり,価値観が多様化し,性別にかかわりなくその個性と能力を発揮することが期待される今日社会において,到底採用することができないものである。単に女性であることは,上記の自ら性交渉を開始することができない客観的事情にも当たらないというべきである。」

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