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2017年9月 2日 (土)

結婚前の嘘は法律上どう考えられるでしょうか?

恋愛をしているときというのは、自分をよく見せようという心理が働くものです。結婚した後に、言ってたことと違ったことがわかったとなると、夫婦間では喧嘩になること間違いなしです。
夫婦喧嘩をしてもよく話し合って、少々オーバーな表現はあったかもしれないけれど、まあ仕方ないと元の生活を取り戻せればよいですが、それがもとで何か法律上できませんかねということになりますと穏やかではありません。

婚姻前に話したことが嘘であった。言うべきだったことを言ってなかったではないかということは、離婚の案件を担当していますと、時々問題になりますが、法律上はどう考えるべきなんでしょうか。

婚姻前の嘘ということになると、一つ考えられるのは婚姻取消しという制度です。
民法上は「詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる」と規定されています(747条1項)。
さて、ではここでいう「詐欺」とはどの程度のことをいうのかです。この言葉をゆる~く解釈してしまいますと、婚姻の取消しというのがどんどんできてしまいます。取消しというのは、一旦成立したものの効果をなくしてしまうものです。ましてや婚姻をすれば子どもが生まれることもありますし、いろいろな法律上の関係が積み重なってしまいますから、そうそう簡単に取消しを認めるわけにはいかないように思います。
そんなことを考えてのことなのでしょう。法律家はここでの詐欺は、人の属性について虚偽の事実を告げたり、不利な事実を黙秘するものだが、そういう行為の中でも「一般人について相当重要なものとされる程度の錯誤に陥ったこと」が必要だと言っています。相当強度な違法性が必要だということです。
実際の例を挙げたいのですが、ほとんど裁判例がないようです。昭和13年判決という古い判決がよく引き合いに出されています。
仲人から男性は薬剤師で、月給90円と聞いて結婚したのに、薬剤師の免許もなく、また月給は70円だったというケースがあり、詐欺での取消しは認められていないという裁判例があります(東京地裁昭和13年6月18日判決)。
私の感覚でいうと、だいぶ酷いケースのような気もするのですが、まあ、そういう裁判例があるのです。ただ、この婚姻の取消権というもの、詐欺だということがわかってから3ヶ月以内に取消しを請求しなければなりません(民法747条2項)。そういう意味では取消しというのは、はなはだ使いにくい制度で、裁判例がほとんどないのは、この3ヶ月という期間にも理由があるのかもしれません。

そうすると何もできないのではないかと思われるかもしれませんが、私はこの問題は離婚原因との絡みで問題とすることはできると考えています。

婚姻生活は全人格的なものです。結婚前の浮気を知ったことで、それまでに夫婦が築いてきたお互いの信頼関係は壊れてしまうのが通常ではないでしょうか。
嘘を言われた方は信頼関係がなくなったことを相手に伝え、今後の夫婦関係を考え直していくことになるかと思います。そのような話し合いをして信頼関係が回復すれば、婚姻関係は続いていくことでしょう。しかし、不幸なことに、相手が嘘ばかりついて自分を守ろうとしているとか謝罪をしないということであれば、お互いの信頼関係は壊れていき、婚姻関係は破綻へと向かっていくのではないかと思います。

このように結婚前の嘘といったできごとを今すぐに離婚原因とすることはできませんが、そのことをきっかけに話し合いをしたその結果は、離婚原因の一つとなっていく可能性があります。

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